サンクコスト効果 (サンクコストの誤謬) とは、お金や労力、時間を投資した結果、たとえ今後のコストがメリットを上回っても、同じことを続けてしまう傾向のことをいいます。サンクコスト効果の落とし穴にはまると、自分に利益をもたらさない不合理な決断をして、さらに深みへとはまり込んでしまいます。この記事を読み、サンクコスト効果を克服して、自分や組織にとって真のメリットがある選択ができるようになりましょう。更新: この記事は、マーケティングにおけるサンクコスト効果の影響に関する記述を含め、2024年 6月に改訂されました。
更新: この記事は、マーケティングにおけるサンクコスト効果の影響に関する記述を含め、2024年 6月に改訂されました。
この出来事をもとに、「コンコルドの誤謬」という言葉が生まれました。人は多大な投資を行うと、失敗が明らかな事業でも継続してしまうことを表しています。一般的にこの現象は「サンクコスト効果 (サンクコストの誤謬)」もしくは「コンコルド効果」と呼ばれています。
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サンクコスト効果とは、事業に金銭や労力、時間を投資すると、たとえ今後のコストがメリットを上回るとしてもそれを継続してしまう傾向のことです。
専門用語のように聞こえますが、サンクコスト効果は、人生やビジネスにおける判断の落とし穴として、私たちがよく経験するものです。退屈な映画を、お金を払ったからといって観続けるといった些細な日常生活の事柄から、採算が取れないビジネス上の投資を引き上げずに継続するような重大な問題まで、サンクコスト効果はさまざまな意思決定に影響しています。よりわかりやすい言葉でいえば、サンクコスト効果とは「損の上塗り」ということです。
サンクコスト効果に惑わされると、人は自分に利益をもたらさない不合理な判断をしてしまいます。この傾向は人間の行動心理に深く根差しているため、どんどん深みにはまり込むことなく論理的に正しい判断をするには、サンクコスト効果がどう働くのかを理解することが大切です。
たとえばビジネスプロジェクトに投資したお金や、恋愛で費やした時間など、もう取り戻せない過去のコストがサンクコストです。合理的に考えれば、こうしたサンクコストは、私たちの未来に関する決定には無関係です。なぜならそうした判断は、回収不能な過去の投資ではなく、将来的なコスト予測やビジネス目標のみに基づいて下すべきだからです。
ビジネスシーンにおいて、採算が取れないプロジェクトを継続するのは不合理です。そうならないようにするには、目標管理と進捗管理が重要になってきます。日々の仕事を見える化して、順調なプロジェクト管理を運用しましょう。
たとえば、あるアンケート調査で、実験の参加者に週末にスキーツアーを誤って 2 つ予約した場合を想定してもらいました。一つはミシガン州への 100 ドルのツアーで、もう一つはウィスコンシン州への 50 ドルのツアーです。研究者たちはウィスコンシン州へのツアーのほうが楽しめると説明しましたが、参加者たちの大部分がミシガン州のツアーに行くと答えました。心の中で計算した参加者たちは、たとえあまり楽しめないにしても、初期投資のより大きい方の行動を選んだのです。
行動経済学者たちは、サンクコスト効果をもたらす心理学的要因として、少なくとも次の 5 つを挙げています。
たとえば、1 万円を手に入れれば嬉しくなりますが、1 万円を失った落胆はそれを上回ります。結果として、私たちはなんとかして 1 万円を失うことを回避しようとします。たとえそれで 1 万円を新たに手に入れるチャンスを犠牲にするとしてもです。
サンクコスト効果でいえば、損失を被って嫌な思いをしたくない一心で無駄な投資にこだわり続けることが、損失回避の心理です。
私たちがある決断を継続する場合は、それがおおむね成功だというように、肯定的にフレーミングします。しかし方針を変更する場合、たとえ論理的には損を切り捨てることが正しくても、私たちは失敗のストーリーを作り上げがちです。
たとえば、あなたがブログキャンペーンを開始したとしましょう。ところが途中でブログのトラフィックが期待したほどではないため、残りの予算を有料広告に投資した方がよさそうだと気づきます。しかし、そうするとブログキャンペーンが失敗だったことになると考え、お金を別の目的に使うべきところを、キャンペーンを継続する判断を下してしまうのです。
サンクコスト効果においては、特に金銭を投資した場合、成功の確率を過大評価し、失敗の可能性を過小評価しやすいことに表れます。たとえば、新規事業に多額な投資を行った場合、現実のエビデンスがどうあれ、いつかうまくいくだろうと思い込みがちになります。
決断を下した本人は、お金を無駄にした罪悪感から、無意味な投資を続けてしまうことがあります。
たとえば、チケットを買って映画館に入ったものの、30分くらい経ってうんざりしてきたとします。しかし、他の観客に自分がお金を無駄にしたと思われたくない、そして自分自身もお金を無駄にしたという嫌な気持ちを味わいたくない、という二つの理由から、残りを頑張って観続けます。これが無駄を避けようとする心理です。
チームにとって役に立たないソフトウェアツールを、購入したからといって使い続ける場合も同じです。投資を無駄にしたくないばかりに、ツールにこだわり続けるというわけです。
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サンクコストは、すでに投資して、回収できないものすべてを指します。ここで紹介するサンクコストの例を参考に、あなた自身がサンクコスト効果に影響を受けていないか、振り返ってみましょう。
サンクコストには次のようなものがあります。
機会費用: ほかにもっと生産的な目的に使えたかもしれない時間など
労力: 特に困難なタスクなど
精神的負担: それまでに感じた不安など
施設や諸経費
材料と設備
企業買収などの投資
年間のサブスクリプション費用
弁護士費用や広告費など、払い戻し不能のビジネスコスト
マーケティング活動を行う上で、サンクコスト効果を意識することはとても重要です。商品やサービスを利用したり購入するときに、消費者の行動心理を読み解くことは、直接売上や成功につながるからです。
前述したサンクコスト効果の背景における行動心理を逆に利用して、マーケティングでは一般的に次のような施策が取られています。
無料サンプルや無料版の提供: 何かを使いはじめると、人は「せっかく使い始めたのだから途中でやめたらもったいない」という心理が働きます。
付録や継続特典の提供: 「〇〇を買えばポイントがもらえる」「毎月買い続ければ特典が全種手に入る」など、消費者の買い続けたいという心理を促す手法です。
消費者のランク付け: EC ページや会員制度のあるサイトなどで、消費者のランクを行っていることが多いのは、ランクによる特典やサービスを「せっかくだから利用したい」という心理を利用しています。
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サンクコスト効果の影響下にある判断は、不利益をもたらす誤った選択につながることが多いため、問題を引き起こす可能性があります。論理的な判断ではなく、たとえ自分に利益をもたらさなくても、時間や金銭、エネルギーを投資し続け、さらに引っ込みがつかなくなるという悪循環に陥ります。投資をすればするほど、私たちは深みにはまり、当初の誤った判断にさらにリソースをつぎ込むのです。
幸いなことに、サンクコスト効果は確定事項ではなく、回避可能です。次にご紹介する 3 つの戦略に従って、認知バイアスにとらわれず、論理に基づいた合理的な判断を下しましょう。
サンクコスト効果を知るだけでも、その影響を逃れる大きな一歩になります。つまり、ここまで読んできたあなたは、すでに不合理な決断をする可能性が低いということです。
サンクコスト効果がどう作用するか、それを補強する心理学的要素にどんなものがあるかを理解していれば、判断を下す際に、認知バイアスについて気を配るようになるからです。
そのために、次の質問を自分に問いかけるようにしましょう。
自分は何を失うことを恐れているのか?その結果、自分は何をすることをためらっているのか?
この状況について、自分は失敗や成功をどう定義しているのか?その成功と失敗の定義は理にかなっているか?
自分の試みが成功する実際の可能性はどれくらいか?
誰か別の人がこれに投資すると決めたら、自分はどうするか?友人が自分と同じ状況にいたら、どんなアドバイスをするか?
恐れているのは、無駄にしたと思うことや、他人にそう思われることか?その懸念は合理的か?
ここでは、実際のデータに基づく判断をする方法をいくつか挙げてみます。
新しいプロジェクトにリソースを投資する前に、達成したい具体的な成功指標を設定します。前もって測定可能な目標を決めることで、目指すターゲットが明確になり、成功を測る手段も手に入ります。つまり、プロジェクトの目標に到達しない場合、方法を調整するか、そのまま継続するかについて、データに基づく判断ができるのです。
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たとえば、有料広告によって製品の登録者数を増やすプロジェクトに取り組むとします。目標は 6 か月間で登録者数 30% 増です。ところが 6 か月後、登録者数の増加率は 10% にとどまり、広告費の方が新規登録によって得た収益を上回っていました。この場合、具体的な目標をあらかじめ設定しているため、それがプロジェクトを中止するべき確固としたエビデンスとなります。その結果、サンクコスト効果に引きずられて広告に投資を続けることなく、新しい方法を試すことができます。
たとえば、会社の人事管理ツールを選ぶ際に、意思決定マトリクスを使って、現在使用中のものとそれに代わる 2 種類の新しい候補とを比較します。それぞれのツールについて、費用、顧客サービス、顧客レビューという 3 つの要素を考慮し、各要素の点数と設定した重みに基づいてスコアをつけます。
この例では、意思決定マトリクスを作成することで、実際のコストと各選択肢のメリットを比較できるため、サンクコスト効果に引きずられて、時間やお金を投資してきた選択肢を選んでしまうことがありません。
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プロジェクトにコストをかけたからといって、沈みそうな船と運命を共にすることはありません。ここで紹介した戦略を活用し、過去を手放して、あなたとチームにとって最善な決断を下しましょう。サンクコスト効果の影響下では、自分自身が最大の敵となってしまいます。しかし自己の内面を振り返り、客観的に判断することによって、あなたはチームの成功を導くキーパーソンになれるのです。
事業やプロジェクトをデジタルツールで管理し、常にデータに基づく管理をできる状態にしておくことも、サンクコスト効果を回避するために効果的です。大規模組織でもしっかり対応・サポートできる Asana をぜひご利用ください。
A: 「サンクコスト (sunk cost)」とは、過去にすでに負担しており、回収できない費用のことで、日本語では「埋没費用」とも呼ばれているビジネス用語です。
A: サンクコスト効果とコンコルド効果は、同義として用いられます。後者の「コンコルド」は、英仏両政府の出資による超音速ジェット機「コンコルド」プロジェクトに由来しており、破綻しているプロジェクトに何年も投資し続けた心理状態は「サンクコスト効果」として説明することができます。
A: サンクコストバイアスは、「サンクコスト効果」「コンコルド効果」とも呼ばれる心理状態で、損失が出るとわかっているのに、これまでの投資した分を惜しむことでつい出資し続けてしまう心理的傾向を指します。つまり、継続してしまうと今後コストがメリットを上回ると理解していてもなお、やめれない心理を言います。